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福島原発近郊の空間線量率推移への考察
福島原発事故にともなう空間線量率の状況が今後どう推移するかを推測する。

【物理的な前提】
起点時刻におけるCs134とCs137の、同ベクレル濃度の場合の空間線量寄与率は2.64:1。
物理半減期のみを考慮した場合の1年後の空間線量率減少はCs134が71.0%、Cs137が97.7%。
チェルノブイリ原発事故におけるCs134とCs137の放出・沈着比率はおおよそ1:10。
福島原発事故におけるCs134とCs137の放出・沈着比率はおおよそ1:1。

【環境的な前提】
チェルノブイリ原発事故における定点測定地点における諸環境条件と、福島原発事故における定点観測地点における諸環境条件は、試算を簡単にするため同等の傾向を示す状態にあると仮定する。
上記仮定は、別に考慮すべきチェルノブイリと福島の環境差分を例示した場合にのみ、例示した要素に関して推測を追加する。

【統計的な前提】
チェルノブイリ近郊における空間線量率の減少具合は、事故後1年間でおおよそ事故直後の70%程の減少であった。また事故後4年間程度は継続して前年比70%減程度の減衰を示した。これは物理半減期の経過に加え、土壌沈降にともなう遮蔽効果によるもの、らしい。(→出展:http://www.unscear.org/docs/reports/2008/11-80076_Report_2008_Annex_D.pdf)


これらを前提として、福島原発事故後の空間線量率の推移を推計する。

【物理半減期以外の減衰効果】
Cs134:Cs137の存在比が1:10の場合、物理半減期以外の要素による減衰率が年75%と仮定すると、空間線量率は1年目で69.1%、2年目で48.4%、4年目で24.9%となり、おおむね当てはまる。
Cs134:Cs137の存在比が1:1の場合、物理半減期以外の要素による減衰率が75%と仮定すると、空間線量率は1年目で58.8%、2年目で35.3%、4年目で14.6%になる。
土壌沈降や外部流出は降雨量に直接影響されるとの予測は、直感的には妥当性があるように思える。チェルノブイリ近郊の年間降雨量は300mlで、福島近郊は1300mlとのことなので、降雨の降下による減衰率はチェルノブイリのそれよりも大きいと推測できる。例えば物理半減期以外の要素による減衰率を65%と、チェルノブイリのそれと比較して40%割増すると、1年後の空間線量率は50.9%程度になるとみられる。

【実測値との比較】
http://www.pref.fukushima.jp/j/old_data.html
福島県の環境放射能測定結果(といいつつ空間線量率測定だが)のデータから、原発より20~50km圏内の測定結果を利用する。2011/06/01からほぼ全期間にわたって測定値を見ることのできるポイントに対して、測定値の10日平均を計算する。
平均をとる対象は各月の1~10,11~20,21~30で、大月の31日は値を捨てた。

取れた値は以下の通り。単位はuSv/h
datetime ① ② ③ ④ ⑤
2011/6/1 0.15 10.40 1.92
2011/6/11 0.15 10.36 1.92 1.38
2011/6/21 0.15 9.85 1.87 1.34
2011/7/1 0.15 9.63 1.81 1.32
2011/7/11 0.15 9.47 1.79 1.30
2011/7/21 0.15 9.10 7.37 1.80 1.29
2011/8/1 0.15 8.91 7.35 1.72 1.24
2011/8/11 0.15 8.87 7.25 1.70 1.23
2011/8/21 0.15 8.66 7.06 1.72 1.20
2011/9/1 0.15 8.56 6.98 1.66 1.19
2011/9/11 0.15 8.58 6.91 1.66 1.17
2011/9/21 0.14 8.23 6.72 1.74 1.01
2011/10/1 0.12 8.27 5.88 1.82 1.02
2011/10/11 0.11 8.17 5.76 1.81 1.01
2011/10/21 0.11 8.09 5.65 1.78 1.00
2011/11/1 0.11 8.04 5.61 1.74 0.99
2011/11/11 0.11 7.93 5.52 1.72 0.98
2011/11/21 0.11 7.94 5.44 1.69 0.97
2011/12/1 0.11 7.81 5.37 1.59 0.96
2011/12/11 0.11 7.46 5.20 1.63 0.96
2011/12/21 0.11 7.14 4.53 1.62 0.95

① いわき市川前支所(可搬型MP)南西約35km
② 飯舘村長泥コミュニティセンター(可搬型MP)北西約33km
③ 浪江町津島支所(可搬型MP)西北西約29km
④ 南相馬市横川ダム(可搬型MP)北北西約22km
⑤ 紅葉山公園(固定局)北西約62km

【飯館村の例】
飯館村の測定値が馬鹿でかい。これを見てみると6/1時点で10.4、12/21時点で7.14となる。おおよそ半年で68%に減衰している。これは、物理半減期で換算するとおおよそ半減期372日程度の核種による減衰率と等しくなる。
一方、空間線量率は物理半減期以外の要素による減衰が見られることはチェルノブイリの事例でわかっている。チェルノブイリと同等の減衰効果が飯館村でも見られたと仮定すると、線量の減衰は1年後で約59%となる見込みになる。降雨量の違いが福島では空間線量率の減衰に寄与したと仮定すれば、飯館村でみられる空間線量率の減衰状況はチェルノブイリの事例に類似する状況にあると考えることができる。


【飯館村以外の例】
飯館村以外は相対的に線量率の数値が小さいが、こちらの状況も見てみる。

いわき市、浪江町、紅葉山のいずれも、9/11まで単調減少傾向で、9/11から10/11にかけて急減し、10/11以降以前と同じ単調減少傾向に戻る。
その一方、南相馬では前3地点では急減した期間に逆に増加傾向を示し、その後同様に単調減少傾向に戻る。

2011年の福島県の降雨量を見てみると。
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/monthly_s1.php?prec_no=36&prec_ch=%95%9f%93%87%8c%a7&block_no=47595&block_ch=%95%9f%93%87&year=2011&month=&day=&view=p1

6 75
7 148.5
8 106.5
9 325.5
10 95.0
11 37.0
12 29.5

9月の降雨量が突出して多い。ここから、降雨量の増大により3地点ではチェルノブイリでみられた以上の放射性物質の移動が発生し、空間線量率が低減したとの推測ができる。
逆に、南相馬では線量率が上昇している。これは測定点がダムであることから、ダム周辺流域から流入した雨水に放射性物質が含まれており、降雨による線量低減効果を流入した放射性物質の線量が上回ったとの推測ができる。
一応合理的な説明の立てつけにはなる。これが成立しているのならば、自然降雨はある程度の範囲ではチェルノブイリの事例に類似する空間線量率をもたらすが、ある程度を越える降雨量となった場合には雨水に乗って放射性物質の移動が発生し、地域毎に放射性物質の流失と集積が行われると推測できる。

【飯館村との違い】
飯館の該当期間には空間線量率の変動が目立たない。ここから考えられる状況は

1.降雨の影響に見える他測定点の線量率の推移は、そう見ることができるというだけで実は降雨とは無関係
2.飯館村だけ降雨量が違う
3.飯館村の測定地点の特性上流失と流入が概ね等しくなった。
4.飯館村の測定地点の特性上流失も流入も発生しなかった。

ありそうな状況は1か4といったところ。3地点では大きな降雨があると空間線量率が一気に変動したように見えるので、4が状況として推測できるだろうか。

【今後の推移】
先に試算した、土壌沈降などの物理半減期以外の要素による空間線量率の減少幅を、福島では直近数年において年間65%と仮定すると、1年後に50.9%、2年後に26.5%、4年後に8.2%に空間線量率が減少する。この数値は、半年間の飯館村の実測値推移に概ね合致する。
減少幅をチェルノブイリと同様の75%と仮定しても1年後に58.8%、2年後に35.3%、4年後に14.6%に空間線量率が減少する。
この試算通りであれば、事故から2年後には空間線量率は何もしなくても26~35%くらいに落ちることになる。これは、外部被曝が年間14mSvの地域であっても2年後には5mSvに落ちることを表す。
ただし、これは地域から放射性物質が失われたわけではなく、多くは土壌中に沈降したためと考える必要がある。
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